題目
言語学を自閉症研究に繋ぐインターフェースとしての「共感獲得」
 
綿巻徹(鎮西学院大学現代社会学部・教授)
 
要旨
終助詞「ね」は最も早期に(1歳後半に)発現する一群の助詞の1つである。それは話し言葉(対話)にだけ使われ、既に聞き手が知っている内容(旧情報)を聞き手に向かって同調的に話しかけながら、その聞き手からその発話内容に対する同意/同調を引き出す働きをする。本講演では、終助詞「ね」を「共感獲得表現助詞」と名付け、その発達と障害を、発話資料を基に記述した事例研究(綿巻、1997)と、その研究の契機となった長期早期介入支援の実践体験と、関連する先行諸研究を紹介する。自閉症というチャレンジを解く鍵は、共感、共有、協働、参加、交互性、主体間関係(間主観性)、興味関心/利得、随伴性、背景/状況場面であり、それらを処理、制御する力の開発、具現化と、それを支え促す社会的基盤/生物的基質とそのネットワークを解き明かすことである。