題目
ASDと終助詞使用の関係: コーパスデータ, 産出実験, fMRI実験による検討
 
直江大河(東北大学文学研究科・博士後期課程/日本学術振興会・特別研究員(DC1)/国立障害者リハビリテーションセンター高次脳機能障害研究室・研究生)
鈴木あすみ(国立障害者リハビリテーションセンター高次脳機能障害研究室・流動研究員/東北大学文学研究科・博士後期課程)
幕内充(国立障害者リハビリテーションセンター高次脳機能障害研究室長)
 
要旨
自閉スペクトラム症(ASD)の幼児が終助詞(特に「ね」)をほとんど使わないという事例研究(綿巻, 1997等)について、3種類の方法から定量データに基づく証拠を提出する。1) 談話完成課題を用いた終助詞発話実験から、成人ASD者は成人TD者よりも「ね」を用いる頻度が低く、不適切な文脈で「よ」を用いる頻度が高いことが分かった。2) 日本語日常会話コーパスの収録話者(TD)のASD傾向と社会認知に関する特性の傾向を測定した。日常会話における終助詞使用率が個人特性に応じて変わることが分かった。3) 磁気共鳴機能画像法(fMRI)によって終助詞がついた文を読んでいる際の脳活動を調べた。終助詞の処理には伝統的に言語野と呼ばれる脳領域と社会認知関連領域の両方が関与していること、ASDに関する個人差に対応して活動が変化することが分かった。