題目
終助詞と共有知識管理
 
田窪行則(国立国語研究所長)
 
要旨
日本語共通語の終助詞はそれがつく文が表す情報が新規情報であるか前提情報であるかで分類されることが多い。しかし、「よ」が新規情報を、「ね」が共有知識を表示するとすると、「よね」は矛盾した特徴づけを持つ。そこで田窪・金水 (1997) 等では「よ」「ね」の語彙的特徴づけとして、「よ」をI-領域(間接情報領域、一次的領域)への新規情報登録、「ね」を情報計算結果の確認とし、「よね」の情報計算は同時ではなく継起的であるとして矛盾を解消しようとした。
 しかし、これはあくまで、これらの終助詞の語彙的特徴づけに関するものであり「よね」や「ね」の使用に際して、聞き手の知識の想定や共有知識の前提などが関与していないことを意味しない。
 本発表では、コミュニケーションにおける「心の理論」と「記憶(作業記憶、エピソード記憶、長期記憶など)」の役割を終助詞の関わる知識管理計算に即して考える。