題目
第二言語習得における双方向言語活動の役割
 
鄭嫣婷(東北大学国際文化研究科・准教授)
 
要旨
本発表では、発表者が行った二つのfMRI研究の事例を紹介しながら、他者との双方向による言語活動が第二言語習得を促進することを脳科学的観点から議論します。まず、単純に状況を記述する言語産出と相手に向けた言語産出を比較した実験を紹介します。その実験では、相手に向けた言語産出の際には、相手の気持ち・考えや場面・状況を読み取り、それらに応じで語彙や表現等を選択する必要があり、社会認知領域を必要とすることがわかりました。この結果は、目的や場面、状況を考慮しない言語活動を行っても、第二言語コミュニ―ション能力を効果的に伸ばすことが難しいということを示唆しています。また、録画したビデオでのコニュニケーションと実際の人が目の前にいる対面コミュニケーションを比較した実験では、対面条件がビデオ条件よりも社会認知領域の関与が高まること、英語の流暢性を促進させることが明らかになりました。人と人が直接的にやり取りすることが第二言語習得には有効であることを示唆しています。