題目
話し手-聞き手句とコミットメント句における統語論とASD
 
宮川繁(マサチューセッツ工科大学・教授)
 
要旨
生成文法の発展の初期に、Ross (1970)は、全ての発話の主文には、話し手と聞き手の表現を含む上部構造の層があると提案した。Miyagawa (2022, Syntax in the Treetops, LI Monograph, MIT Press)では、この上部構造をSAP(speaker-addressee phrase; 話し手-聞き手句)と呼び、それに加えてKrifka (e.g., 2020)の研究を取り入れて、SAPと発話表現の間にコミットメント句を取り入れている。SAPとコミットメント句を合わせて日本語の丁寧語や終助詞の分析を行っているが、そのコミットメント句は、先行研究で示されている自閉スペクトラム症の子供の話し言葉にもみられる構造であることについて述べる。