題目
共感の認知神経メカニズムからみる自閉症スペクトラムの特性
 
梅田聡(慶應義塾大学文学部・教授)
 
要旨
「共感」という現象は,直感的には理解しやすく感じられる反面,科学的に定義しようとすると,実体がつかみにくいという特徴がある.共感がどのような役割を持ち,どのような神経基盤から成り立っているのかを理解するためには,「心―脳―身体」の三者関係をもとに考える必要がある.本講演では,その裏付けとなる脳機能画像研究や神経心理学研究の一連の成果について触れ,共感という視点から自閉症スペクトラム障害の特性について考える.その際,身体内部の変化に関する感覚である「内受容感覚」と,それを支える神経基盤であるセイリエンスネットワーク(島皮質・帯状皮質前部)の機能に着目する.