題目
自閉症スペクトラムの感覚・認知特性と言語
 
岩渕俊樹(浜松医科大学子どものこころの発達研究センター・特任助教)
 
要旨
自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder, ASD)の知覚や認知の特性を説明しようとする仮説の中で、代表的なもののひとつにASD者は認知的共感(他者の信念や感情を推測すること)に困難を抱えているとするものがある。一方、直示表現など会話相手との関係性や文脈の理解が必要な言語運用において、ASD者は特徴的なふるまいを示すと報告されている。こうしたASD者の言語的特徴と認知的共感の関連を指摘する向きもあるが、明確な知見は得られていない。本発表では認知的共感をはじめASD者の知覚・認知と言語に関する研究動向を紹介し、今後期待される研究の方向性について議論したい。